一橋MBAはグループワークが多い。私はまだ1年目の前期しか経験してないが、すでに4つのグループワークが組成され、それぞれのグループで成果物(レポートやプレゼン資料)を作り上げている。
グループワークの中で避けて通れないのが「議論(ディスカッション)」である。グループで提出するレポートなどの成果物は1つなので、メンバーの意見をまとめる必要がある。そのまとめ作業に不可欠なのがディスカッションだ。ここで「まとめ作業」と述べたが、ディスカッションは単なるまとめ作業に留まらないことは後述する。
私はこれまで本気の意見のぶつかり合いというのはなかなか経験してこなかったし、うまくやっていけるか不安であった。自分の意見が正しいと主張するメンバー同士がぶつかり合い、雰囲気が悪くなるのではないかという危惧があった。しかし、実際にグループでディスカッションをしてみて、その重要性に気づくこととなった。
他者から得られる新たな視点
1つの頭で考えられることには限界がある。ディスカッションを通してグループメンバーの意見を聞くことは刺激的である。それぞれの知識、仕事を通じた業務経験、社会人経験がある中で、そのようなバックグラウンドから生み出される意見や考えには、自分には到底思いつきもしない新たな視点が提示される。なるほど、そういう観点もあるな、と思うことが幾度もあり、刺激的な経験だった。自分の意見より、そっちの方が面白いし論理的だ、と感心ことが多くあった。
議論を通して深堀りされる自分の考え
私のこれまでの経験では、自分の考えた意見をそれぞれが発表し、その発表に対して疑問や質問、あるいは反論を投げかけるところからスタートする。自分の意見でロジックが薄い部分、破綻している部分、記述されてない背景など、様々な意見がメンバー投げかけられる。そのような質問や疑問に回答するため自分の考えをまとめるうちに、「自分の意見にはこういう穴がある」「Aについては考えてたけど、補完財のBについても当然考えなければならないな」など、詰めの甘い部分が炙り出され、より深く精緻な考えになることが多い。
この経験は非常に貴重で、必ず今後も生きると考えている。クライアントとディスカッションして、事業や組織の詰めの甘いところを抽出する作業は間違いなく有意義だ。議論、対話は本当に重要であるという事が理解できた。
ディスカッションをする場合の注意点
グループワークをする上で自分が心がけていたことがある。「自分の意見に固執しない」ということだ。複数人が集まっている以上、自分の意見は部分的にしか採用されない。あるいは、考えが昇華して別の形になるケースもある。
まず、「自分の意見が正しい」と思わない事。一義的には諸々調べ上げて必死に頭を使って極限まで考えるのは当然だが、グループディスカッションのプロセスに移行した後は、他のメンバーからどんな意見が飛び出してくるのか楽しむくらいの心持ちが良いと思う。自分の意見とは全く違う意見であっても、背景のロジックがしっかりしていて説明可能であれば、私はその意見を支持した。その意見が教授からどういうフィードバックを受けるのか、いってみようじゃないか、という気持ちだった。グループとしての意見は、自分の意見とは別の意見として考えるべきであると思う。個人と法人が別人格であるように、個人とグループは別人格なのである。
ディスカッションにならなかったグループ
グループワークはグループメンバーによって質の高低差が激しい。私はすでに1度、ディスカッションにならなかった経験がある。非常につまらなかった。皆が自分の意見を言って終わり。質問もなし。私だけが他のメンバーに質問して終わってしまった。できる限り議論にしようとしたが、そもそも相手のやる気がないケースもある。
MBAに来ているメンバーすべてがやる気に満ち溢れているとは思わない。それぞれの事情もあるだろうと思う。忙しくて考える暇がない、ということもあるかもしれない。そういうメンバーに当たってしまったときは、仕方ないので自分でできる限りのことをやる。言い方は悪いが、外れのグループに当たってしまうケースは、何度もグループワークをやるうえでは避けられないだろう。ただ、私の感覚ではMBAに来ている人のほとんどは誠実に課題と向き合うことができるので、本当に運の問題であると思う。
ちなみに、グループワークの成果物に対する教授からの評価は当然存在するが、全体としてそこまで大きな比重は置かれていない。教授もグループワークがメンバーの質に左右されることを十分理解している。
まとめ 理解や事象を深堀りするためにディスカッションは有益である
先にも述べたが、ディスカッションは適切なメンバーと行えば、非常に有意義なものになる。組織力が存分に生かせる形態であると思う。
私は2024年に独立を予定しているが、独立後は経営者と対話をする機会が多くあると思う。その中で、経営について議論する機会は必ず設けたい。きっとそれは、クライアントの事業のために、そして我々が提供するサービスの品質向上のために、必要不可欠だと考える。
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